インプラント治療には、土壌となる歯槽骨が必要です。骨が十分にない場合、インプラントを埋めることが難しく、治療を断られるケースもあります。しかし、骨が十分にない場合でもインプラント治療を可能にする方法がいくつかあり、その方法のひとつがスプリットクレストです。「骨の高さは十分にあるが幅が足りない」というときに採られる方法です。
スプリットクレストでは、骨に器具で切れ目を入れて、その隙間にインプラントを埋めていきます。薄い骨を分割することで、インプラントを入れる隙間を作るという技術。薄い骨に切れ目を入れる施術は繊細です。下手な施術では割れてしまいます。インプラント施術の中でも、高度な技術力が要求される手法のひとつです。
スプリットクレストは、上顎前歯の歯槽骨の幅が狭くなっている人に適用されます。しかし、骨の幅が狭すぎてもインプラントを埋め込むために十分な隙間を作れません。具体的には、上顎前歯の幅が3mm以上4mm未満の場合に適応されます。
骨に切れ目を入れて広げる必要があるため、骨の柔らかさも重要です。硬すぎると広がりにくく、折れてしまいます。下顎は硬い骨で出来ているため、上顎前歯に適用されることが多いです。また、歯槽骨にインプラントを埋入できる高さがなければ適用できません。
スプリットクレストが適用できるのは、上顎前歯にインプラントを埋入する場合で、上顎前歯の歯槽骨の高さはあるものの幅が3mm~4mmの人です。
まずは骨を露出させるために、歯肉を切開します。歯茎に麻酔をしてから、歯茎を切開。インプラントを埋め込む部分の骨を露出させます。
歯槽骨の上部から器具を使って切れ目を入れます。従来はノミのような器具を使っていましたが、最近では超音波機器での分割が可能になり、患者の負担は軽減しました。完全に骨を割らないように慎重に分割していきます。切れ目を入れるときの器具はクリニックによって異なるため、事前に確認しておくと安心でしょう。
分割した骨を広げます。状態を確認しながら、インプラントが埋入できる幅まで慎重に広げていきます。器具の厚みを段階的に増やしていき、ゆっくり広げていきます。無理に広げようとすると折れてしまうので、徐々に広げていくことが大切なステップです。
骨の幅が広がったら、インプラント体を埋め込む穴を開けます。骨の分割ではノミのような器具を使用しましたが、穴を開けるステップで使用するのはドリルです。できた穴にインプラント体を埋入します。
骨に開けた穴にインプラント体を埋め込むと、インプラント体と骨の間に隙間ができます。そのままではインプラントが固定されません。そこで隙間に骨補填材を詰め込みます。自分の骨や人工骨などで隙間を満たし縫合すると、骨の再生を促せるのです。骨を増やすことができる施術方法のため、骨が薄い人にも適用できます。骨が増加してインプラントが固定されると、インプラントの頭を出してかぶせ物を装着し完了です。
当サイト監修
「郡山ファースト歯科矯正歯科」による
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スプリットクレストは、ドリルで穴を開ける程度で、骨をほとんど削らない施術です。神経や血管を傷つけるトラブルがほとんど起こりません。
「歯茎を切開」「骨を分割」と聞くと、痛そうなイメージかもしれませんが、実は痛みを抑えられます。切開は最小限で、ドリルで骨をほとんど削らないため、術後の腫れも抑えられる患者の負担が少ない施術方法です。
骨を押し広げたところにインプラントを入れるため、入れた後に骨が戻ろうとする力が働き、骨とインプラントが固定されやすいのが特徴です。骨がインプラントを押さえ込む状態になり、インプラントが安定します。また、骨を圧迫しながら穴を開けることで、骨密度が高くなり、より固定されやすくなります。
骨が薄い人に向いている手法ですが、必ず適用されるというわけではありません。特に骨が硬すぎると実施できません。骨を押し広げるときに、硬い骨は割れてしまうことがあるため、適度な柔らかさがある部分に適用されます。下顎の骨にはできないことが多いです。
術後に骨が再生してインプラントを固定しますが、その際、骨が吸収してしまい歯槽骨の頂上が下がってしまうことがあります。また、インプラントの方向が外側に傾くケースもあり、かぶせ物の装着に問題が出ることがあります。
インプラントは、適した骨の量がないと実施できません。しかし、高さに問題がなければ、骨が薄くてもインプラントを実施できる可能性があります。その方法がスプリットクレストです。適用できるかどうかは骨の状態によるので、対応しているクリニックに相談しましょう。