上顎の骨は下顎に比べて薄く、上顎奥歯のすぐ上には上顎洞(じょうがくどう)という鼻に続いている空洞があります。そのため、骨が薄い方はインプラント体を埋入すると上顎洞にへ貫通してしまう可能性もあるため骨を増やす処置が必要となります。その方法のひとつがソケットリフトです。これは上顎の奥歯のみに適応となる方法で、簡単に言えば、インプラント体を埋入する穴に骨補填材を留置して骨の造成を図るというものです。以下に、ソケットリフトの詳しい手順やメリット・デメリットをご紹介していきます。
ソケットリフトは基本的にインプラント埋入手術と同時におこなわれます。まず、インプラント手術と同様に麻酔をおこないます。表面麻酔から注射で数か所に局所麻酔を打ちます。外科手術に不安や恐怖感が強い方は、静脈内鎮静法といって半覚醒状態になる麻酔をすることもあります。
麻酔が効いてきたら歯茎を切開、剥離してインプラント体を埋入する歯槽骨の部位に専用のドリルで穴を開けていきます。このとき、骨が薄いため細心の注意が必要になります。
上顎と上顎洞の間には上顎洞低粘膜、別名シュナイダー膜という非常に薄い粘膜があります。ドリルで開けた穴から、この上顎洞低粘膜を傷つけないように専用の器具で持ち上げます。粘膜を持ち上げることで、骨を足すスペースを作ることが出来ます。
持ち上げたスペースに人工の骨補填材や患者さん自身から採取した骨を細かく砕いたものなどを充填していきます。
骨補填材の中にインプラント体を埋入していきます。骨補填材と患者さん自身の骨、インプラント体が次第に強固に結合するオッセオインテグレーションが起こり、4ヶ月から5ヶ月程度でしっかりと噛めるようになります。
ソケットリフトとよく比較される術式にサイナスリフトがあります。どちらも上顎洞の底を持ち上げて骨を足す点では同じ目的の手術ですが、アプローチ方法や適応条件が異なります。
一般的に、現在残っている骨の厚みが約5mm以上ある場合にはソケットリフトが適応され、骨の厚みが3~5mm以下しかない場合や、失っている歯の本数が多く広範囲なケースではサイナスリフトが選択されます。
サイナスリフトは歯ぐきを側面から大きく開いて上顎洞の側壁に「窓」を開ける方法(ラテラルウィンドウ法)で、残存骨が極端に少ない症例(5mm未満)や欠損範囲が大きい場合にも対応できる術式です。
糖尿病の方でも、
可能性はゼロではありません。
すべての糖尿病の患者さんが、インプラントを断られているわけではありません。郡山ファースト歯科矯正歯科でも、糖尿病の方のインプラント治療の実績があります。
ただし、健康な方と比べて治療のリスクが高いのも事実です。
血液をサラサラにする薬などを服用している場合は、手術のリスクも高まります。
いずれにせよ、通常よりも高難度の手術になることが予想されます。さまざまなケースに対応できる歯科医院に相談するようにしてください。
監修:郡山ファースト歯科矯正歯科 伊波良将院長(歯科医師)
連絡先:024-955-6869
運営元・監修者の情報はこちら
ソケットリフトは非常に優れた方法ですが、どのような症状にも適応するわけではありません。適応されるのは、まず、上顎であること、奥歯であることです。そして、骨が薄すぎる場合は適応にならないことがあります。骨の厚みはおおよそ、5ミリ程度は必要とされています。もし、5ミリ以下の場合には、サイナスリフトという方法が適応になる場合もあります。
ソケットリフトやサイナスリフトを行うにあたって、避けた方がよいケース(禁忌となる場合)もあります。以下に代表的な例を挙げます。
副鼻腔に慢性的な炎症や膿が溜まっている(蓄膿症の)状態では、上顎洞に触る手術は原則避けます。感染リスクが高まるためで、まずは耳鼻科で副鼻腔炎の治療を優先し、炎症が落ち着いてから骨造成手術を検討するのが一般的です。
上顎洞粘膜にポリープがあるような場合も同様に、事前に耳鼻科的処置をしてもらってからの方が安全です。
コントロール不良の糖尿病や重い心疾患・血液疾患など、全身状態が良くない場合は侵襲のある手術は慎重に判断されます。糖尿病がある方は傷の治りが遅かったり感染しやすかったりするため特に注意が必要で、ステロイドを常用している方も骨の治癒に影響が出ることがあるため要注意です。
主治医と相談のうえ、必要であれば内科との連携や手術前後の管理をしっかり行います。
タバコを吸う人は傷の治りが悪く感染もしやすいため、インプラント治療全般において不利になります。特に上顎洞挙上術では血流や粘膜の状態が重要なので、ヘビースモーカーの方は手術をお断りするクリニックもあります。
最低でも術前後は禁煙するよう指導されるでしょう。禁煙できない場合、リスクを下げるため代替として短いインプラントで対応するなどの検討もなされます。
上顎洞の形態によっては、隔壁といって内部に仕切りがあったり骨の厚みが場所によって違ったりするケースがあります。そのような複雑な解剖のときはソケットリフトよりも直視下のサイナスリフトの方が安全です。また残存骨の高さがあまりに少ない(例えば3mm以下)場合、ソケットリフト自体が適応外です。
当サイト監修
「郡山ファースト歯科矯正歯科」による
症例別インプラント治療法解説を見る
ソケットリフトはインプラント体を埋入する穴を利用して骨補填材を充填する方法です。そのため、骨造成のために歯肉などを切開するなどの、手術侵襲はありません。患者さんの身体にも負担が少ない方法です。
インプラント体の埋入を同時におこなえることもソケットリフトのメリットです。骨ができるのを待ってから手術する方法では、治療期間が数ヶ月伸びることになります。
ソケットリフトの大きなデメリットは、骨造成の範囲が限られてしまうことです。前述したように、上顎の骨の厚みがおおよそ5ミリは無いと、ソケットリフトの適応にはなりません。
ソケットリフトはインプラントを埋入する穴から器具を挿し、上顎洞低粘膜を持ち上げますが、その状態を目視することが出来ません。もし、粘膜を傷つけてしまうと、副鼻腔炎や蓄膿症を発症することがあります。
ご紹介したように、ソケットリフトは多くのメリットがある方法です。しかし、一方では技術が必要な方法でもあります。ソケットリフトを希望する場合には、経験が豊富な歯科クリニックで相談してみましょう。